・タンパク質の質を測る指標にプロテインスコアというものがある。これはアミノ酸スコアや他の基準に比べて最も厳しいもの。
・プロテインスコアで100点満点なのは全卵としじみのみ。牛乳ですら74点程度。したがってホエイプロテインもプロテインスコアで言うと100ではないと推測される。
・ソイプロテインにどのアミノ酸をどれくらい足せばホエイプロテイン同等のプロテインスコアになるのか考えてみた。
・ソイプロテインや大豆製品のプロテインスコアの低さは食べ合わせによって補える。
※今回の記事細かいところの前提は省いていたりするので、優しい目で見てください。
古典的プロテインスコアで考える補完の話
ホエイプロテインの高騰に伴ってソイプロテインに乗り換えようかと考えている方も多いのではないでしょうか。
しかし、それを考えたときによく指摘されるのは、
- 「大豆はメチオニンが少ない(制限アミノ酸になる)からプロテインとして質が低い」
というツッコミです。
これは本当なのでしょうか?
また、もし本当なら…
- 外からアミノ酸を少し補えば“理想タンパク質”になれるのか?
これについて、ちょっと算数しながら考えたいと思います。
プロテインスコアとは何か?
今回ターゲットにしているプロテインスコアですが、現代ではほとんど使われなくなった数字です。
というのも、1950年代にFAOが定めた指標で、かなり古い指標になっているからです。
しかし、一部の学者や臨床の現場では、「プロテインスコアこそが最も厳しく重視すべきスコアである」として、いまだに支持されています。
今回はあえて最も基準が厳しいと言われるプロテインスコアをターゲットにして、ソイプロテインのクオリティを上げることを考えます。
プロテインスコアの算出方法
プロテインスコアは
- 食品タンパク質中の必須アミノ酸組成
- 理想パターン(reference protein)との比較
によって点数を付ける方式です。
基本構造はアミノ酸スコアと同じで、
最も不足している必須アミノ酸(制限アミノ酸)が点数を決める=アミノ酸の桶理論
という仕組みです。
【アミノ酸の桶理論】
必須アミノ酸はぞれぞれ評定パターンが設定され、そこにどれくらい届いているかでアミノ酸スコアが決定されます。
そして最も低い点数のものがそのままアミノ酸スコアになります。つまり、スコアを100点にするなら9種類の必須アミノ酸全部が100点満点である必要があるのです。 pic.twitter.com/JEYSU6uLrp— サプリ辞典 (@supps_jiten) June 5, 2022

成人基準の「理想アミノ酸パターン」
FAO/WHO系の成人基準例では、必須アミノ酸は以下の量を含むと「100点」とされます。
(単位:mg/g protein)
| 必須アミノ酸 | 基準量 |
|---|---|
| Ile(イソロイシン) | 40 |
| Leu(ロイシン) | 70 |
| Lys(リジン) | 55 |
| Met+Cys(メチオニン+システイン=含硫アミノ酸 | 35 |
| Phe+Tyr(フェニルアラニン+チロシン=芳香族アミノ酸) | 60 |
| Thr(スレオニン) | 40 |
| Trp(トリプトファン) | 10 |
| Val(バリン) | 50 |
この基準に対し、ソイプロテインがどの程度満たしているかを比較します。
ソイプロテインには何がどれだけ足りない?
マイプロテイン社が販売しているソイプロテインアイソレートにCOA(Certificate of Analysis)があったので、ありがたくデータを頂戴しましょう。
COAではアミノ酸含有量が g/100g protein として記載されています。
例:
- ロイシン:8.2 g
- バリン:5.0 g
- メチオニン:1.3 g
- システイン:1.3 g
つまり含硫アミノ酸(Met+Cys)は
1.3 + 1.3 = 2.6 g / 100g protein
となります。
スコア計算:制限アミノ酸はMet+Cys

各アミノ酸ごとのプロテインスコアの基準とソイプロテインに含有されている量を100gあたりで比較してみました。
引き算の結果がマイナスになっているところが基準に未達のアミノ酸、すなわち制限アミノ酸であると言えます。
表を見ると、含硫アミノ酸、すなわちメチオニンとシステインの合計値が基準に達しておらず、プロテインスコアでは74点台であることがわかります。
したがって、第一制限アミノ酸は含硫アミノ酸であるとわかりました。
他にバリンもギリギリ100点なので、少しでも製品差によって含有量が下がってしまえば、これもプロテインスコアを下げる原因になります。
すなわち、第二制限アミノ酸はバリンであり得ると言えます。
第2制限アミノ酸はバリンかも?
結論:外から含硫アミノ酸(メチオニンとシステイン)を約160~180mg補えば100点相当に近づく
では、含硫アミノ酸がどれくらい不足しているかといえば、100gあたり900mg不足していることがあの表からわかります。
ソイプロテインの粉を一回で100グラムも飲む人はいないでしょうから、ここでは20グラム摂取したと考えましょう。
すなわち、一回のプロテインシェイクで粉20グラム飲む場合です。
その場合、だいたい含硫アミノ酸を160~180mg補えばプロテインスコアが100相当に近づくと言えます。
細かいことを言うと、外部から他のアミノ酸を補うことで分母がずれますから、この値は全体的に若干ずれます。
となると、バリンが第2の制限アミノ酸になりうるので、心配であればバリンも外から微量を補うといいでしょう。
含硫アミノ酸であるメチオニンとシステインを200mg弱補えば、ソイプロテインのプロテインスコアは100相当になる
心配であればバリンも補えると良い
食べ合わせが大事
ここまで細かい算数をしてきておいて、最後にちゃぶ台返しのようなことを言いますが、これは正直あまり気にしなくていいと思います。
というのも、プロテインスコアやアミノ酸スコアは食べ合わせによって補えるからです。
どういうことかというと、ソイプロテインを飲むのであれば、メチオニンやシステインを多く含む食品を一緒に食べればいいのです。
これは実は日本人は古くから先人の知恵としてやっています。
例えば味噌や納豆などの大豆製品と一緒にご飯(穀類)を食べること。
穀類にはリジンが少ないのですが、逆に大豆にはリジンが多い。
反対に大豆にはメチオニンが少ないのですが、穀類にはメチオニンが多い。
というお互いの弱点を補う典型例です。
日本の朝食は理にかなっています。
小麦にはメチオニンが比較的多いので、大豆とパンや
- 豆腐とごま
- 納豆と卵
- 豆腐と魚
- ソイプロテインとオートミール
みたいな組み合わせはプロテインスコアを補う最強の組み合わせです。
また、これらはあくまでどれかのアミノ酸が相対的にバランスが悪いから補いましょうという話なので、1日を通してトータルでプラスマイナスゼロを目指すように補えていれば問題ありません。
必ずしも同時に摂取しなければならないというわけではないです。
(参考) プロテインスコア以外の指標
ちょっと話が脱線するので、興味がない方は読み飛ばしてもらっても構いません。
冒頭に紹介したように、プロテインスコアは他の指標に比べて最も厳しいものとして知られており、100点満点を獲得できるのは全卵としじみだけと言われています。
牛乳のプロテインスコアですら74点と言われています。
したがって、牛乳を原材料として作られるホエイプロテインのプロテインスコアも100ではないと推測されます。
他の指標についても簡単にご紹介しておきましょう。
2. アミノ酸スコア(1973年・1985年改定)
1973年のアミノ酸評定パターンの改定により名称が変更され、さらに1985年には基準が緩和されています。
そのため、だんだんと基準が甘くなってきている指標です。
プロテインスコアで56点だった大豆でも、このアミノ酸スコアだと100点になります。
なので、最近のソイプロテインはアミノ酸スコア100と書かれているわけですね。
繰り返しますが、大豆のアミノ酸スコアは100でもプロテインスコアで考えると56なので、大豆のタンパク質としての質が高いとは決して言えません。
PDCAAS(タンパク質消化性補正アミノ酸スコア / 1990年)
アミノ酸スコアに食物の消化吸収性を加味したものです。
しかしアミノ酸スコア同様、大豆を100点満点に評価していることからして、かなり緩い基準であると言えます。
DIAAS(消化性必須アミノ酸スコア / 近年)
最近に出てきた指標で、結構いろんなところで見るようになってきました。
これは国際酪農連盟(IDF)が推進する最新の基準で、回腸での消化性を厳密に考慮しているところに特徴があります。
国際酪農連盟が推していることからわかるように、乳製品を過度に有利に評価する傾向にあり、注意が必要です。
これらの指標には政治的背景が絡んでいる
DIAASの項目で少し言及したように、プロテインスコア以外のこれらの指標は政治的・商業的背景が絡んでいます。
そういった背景があるので、一部の研究者や臨床の現場からは未だに古い指標でありつつもプロテインスコアが支持されているわけです。
また、冒頭書いたように、プロテインスコアは最も厳しい基準であるとも言えます。