意外と知らない?アミノ酸スコアを決める「アミノ酸の桶理論」を紹介

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このページを読むとわかること

・アミノ酸にも良い飲み合わせ、悪い飲み合わせがある

・プロテインスコアを意識してタンパク質を摂ろう

・食べ合わせ次第でアミノ酸スコアを改善することも可能

プロテインスコアとは

タンパク質はアミノ酸に分解され、そのアミノ酸は20種類あります。

さらにそのアミノ酸は8種類の必須アミノ酸と12種類の非必須アミノ酸に分けられる。というところまではご存知の方が多いかと思います。

 

さて、ここでタンパク質の””を考えてみましょう。必須アミノ酸は体の中で合成できないアミノ酸で体外から食事やサプリメントとして摂取するしかない成分ですから、この必須アミノ酸をたくさん含んでいるアミノ酸こそが「良いアミノ酸」と言えそうです。それをプロテインスコアとして評価します。

そこで1955年にFAO(国際連合食糧農業機関)が、プロテインスコアの理想的なタンパク質(比較タンパク質)を設定しました。要はお手本となる優等生タンパク質を設定したというわけです。そして、それと同様のタンパク質であれば100点、それ以下なら70点…と言ったようになります。

 

プロテインスコアを計算するときには足りないアミノ酸に着目します。これは5教科のテストの点数で考えるとわかりやすいです。

例えばAさんの5教科の点数が100、100、100、100,100だったとしましょう。Aさんのプロテインスコアは間違いなく100点です。これは誰も疑問を持たないでしょう。

しかし、Bさんの点数は100、100、100、100,80と惜しくも最後の教科だけ80点でした。これでBさんのプロテインスコアは80です!平均でもなんでもなく、最低点数によってプロテインスコアは決まるのです。

Cさんの点数が100、75、60、85,80ならCさんのプロテインスコアは60点ということになります。かなり厳しい試験ということがわかりますよね。

 

そういうわけで、プロテインスコアが100点満点のタンパク質は卵とシジミだけです。難関試験を潜り抜けた超エリートといっても良いでしょう。

このような点数の付け方を一般的にはアミノ酸の桶理論と言われています。

私は点数の付け方をテストの点数に例えましたが、一般的には桶に溜まる水の量をアミノ酸に例えて計算しているのです。

アミノ酸の桶理論
アミノ酸の桶理論の図。左の図のように全部のアミノ酸が100点となって初めて100点の水の量を貯めることができる。右の図ではリジンが不足しているため、貯められる水の量はリジンの量に依存する。(リジンが少ないせいで、水の量が少なくなる)。ちなみに、このようにアミノ酸スコアに影響を与える不足したアミノ酸を第一制限アミノ酸と言います。次に点数の少ないアミノ酸(100点未満)があれば第二制限アミノ酸です。アミノ酸図はグリコのHPより

※ちなみに、スポーツサプリメントとして人気の高いBCAAは必須アミノ酸のロイシン、バリン、イソロイシンしか含んでいないのでアミノ酸スコアは0となってしまいます。

アミノ酸スコアではなくプロテインスコアを見ろ!

さて、プロテインスコアと似たような概念としてアミノ酸スコアがあります。これは1973年になってFAQとWHOが協力して作られた基準です。これもアミノ酸評定パターンといってタンパク質の優等生を仮定し、その優等生にどれだけ近いかで点数を決めるものなのですが、アミノ酸スコアの基準はかなり甘いです。

実際にプロテインスコアでは卵とシジミだけだった点数が、鶏肉、イワシ、アジ、牛乳などそれなりの種類の食品が100点満点となっています。

また、アミノ酸スコアには問題があります。アミノ酸評定パターンがコロコロ変わるのです。

100点満点ではなかった大豆がいつの間にか100点になっているのはこれが理由です。これには政治的な理由があると言われています。政治的な理由で食品の栄養素が上下するわけがありませんから、ここはプロテインスコアを重視したいところです。

実際に分子栄養学の生みの親として知られる三石巌氏も「アミノ酸スコアではなく、プロテインスコアを重視すべき」と書いています。

※プロテインスコアは1911年にアメリカのトーマス博士が行った実験が元になっており、それはタンパク質の何%が人体で利用されたかを測定するために、与えた総タンパク量と、尿中に排出された総窒素量を比較するものでした。その結果、人間の要求するタンパク質の最低量は、三種類のタンパク質の間で大きな開きがあることがわかり、そこでトーマス博士は「食品のタンパク質の一定量が、ヒトのタンパク質要求量の何%を満たすか」という数字について考え、それを「プロテインスコア」呼ぶようにしたのです。ですから、スコアの基準が変わることはありません。

(余談)昔ながらの食べ合わせの知恵

プロテインスコアは食べ合わせによってある程度改善することができます。

例えば、米にはリジンが少ないのですが、大豆にはリジンが多く含まれます。逆に大豆にはメチオニンが少ないのですが、米にはメチオニンが多く含まれます。

米、大豆どちらもプロテインスコアは100未満なのですが、これらを組み合わせて食べることでプロテインスコアを100近くにまで改善することができます。納豆ご飯や米に味噌汁といった昔ながらの日本食はプロテインスコアを改善するための昔ながらの知恵だったのかもしれませんね、

ちなみに、小麦の場合でもリジンが少ないという側面を持っています。そのため、小麦(うどん、パスタ、パン)に対しても大豆製品を足すようにしてやるとプロテインスコアを改善することができます。とはいっても、うどんはまだしも、パスタ、パンに大豆製品を組み合わせるのはあまり馴染みがないですので、肉や魚でも良いでしょう。肉や魚は一般的にプロテインスコアが高いからです。

納豆+ご飯に卵を足せると完璧ですが、生卵はあまりオススメしません。トリプシンインヒビターというタンパク質吸収阻害成分によってタンパク質の吸収率が落ちるからです。しかし、トリプシンインヒビターは加熱によって破壊されます。卵を食べるなら加熱処理したものを。

一方で、生卵にはグルタミンが含まれており、グルタミンは加熱で破壊されてしまいます。生卵はグルタミンが含まれると言うメリットもあるので一長一短ですね。

POINT
米、小麦等の穀物はプロテインスコアが低い。肉や魚と一緒に食べてプロテインスコアを改善しよう
米だけ、小麦だけなど炭水化物だけを食べるのはタンパク質が不足するだけでなく、プロテインスコアの観点からもNG
当然、食事+プロテインシェイクでもプロテインスコアを改善することができます。プロテインはプロテインスコア100と思って良いでしょう。
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(余談の余談)タンパク質と糖質を同時に摂取する重要性

書いている途中で思い出したのですが、タンパク質はある程度の糖質と一緒に摂ってやることで吸収効率が高まります。

これは一般的にインスリンの働きによると言われています。インスリンとは主に糖質を摂った際に血糖値を下げるために分泌されるホルモン。肥満に繋がるため「肥満ホルモン」などと言われ、毛嫌いされる傾向がありますが、実は筋肉や細胞に栄養を送り届ける重要な役割を持っているホルモンです。

当然、インスリンがなくても栄養は送られますが、今まで農家の一輪車で栄養を運んでいたのが、インスリンがあると貨物列車で運ぶようなイメージです。

「インスリンがあるとき~(左)」、「ないとき~(右)」

私はこれに加えて消化酵素の働きも関係していると考えています。

中学校の理科の授業で習いますが、タンパク質と炭水化物は両方共通の消化酵素「すい液」が働きます。そのため、タンパク質だけを摂るよりも炭水化物と一緒に摂った方がすい液の分泌量が多くなり、消化吸収も良くなるのでは?と考えています。

 

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